2025.01.09 NEW
EC市場は依然として拡大を続けています。経産省の調査によれば、日本のBtoC-EC市場規模は2023年度で約24兆8,000億円にのぼります。また、それ以降も年平均で9~10%程度の成長が見込まれています。一方で、通販事業者にとって新規顧客の獲得は難易度が増しており、継続的な収益をあげるためにF2転換と呼ばれる、初回購入から2回目のリピートにつなげる施策が重視されています。そんな中、既存顧客との関係性構築のため、リアルなコミュニケーションを取ることができるコールセンターは、顧客のエンゲージメントを高めるためのチャネルとして再注目されています。売上アップや顧客満足度向上のために重視されている3つの手法「アップセル」「クロスセル」「定期引上げ」で成果を上げるための具体的な提案方法や実践的なコツについて解説します。
アップセルとは、顧客が購入を検討している商品やサービスに対して、より高価で機能や性能が優れた上位商品を提案する販売手法です。顧客にとっての利便性やメリットが増える選択肢を提供して顧客満足度を高めつつ、企業の売上や利益の向上を目指すために用いられる販売戦略です。
例えば、基礎化粧品セットを検討中のお客様に、保湿力が高い上位セットを提案したり、スマートフォンの購入時により高性能なモデルを勧めたりすることを指します。
クロスセルとは、顧客が購入を検討している商品と関連性の高い別の商品を合わせて提案し、利便性や購買体験の向上を図る販売手法です。顧客にとって便利でお得な商品を追加で案内することで、購買単価の増加や顧客満足度の向上を目指します。
例えば、化粧品を購入する顧客にクレンジングや化粧水を勧める、ノートパソコンの購入時に専用バッグやマウスを提案する、といった形で行われます。
アップセルとクロスセルは、どちらも顧客単価を向上させる販売手法ですが、アプローチが異なります。アップセルは、顧客が検討している商品やサービスを、より高機能で高価格なものに切り替える提案です。一方、クロスセルは、購入予定の商品に関連する別の商品を提案する方法です。 アップセルは「商品自体の価値を高める提案」、クロスセルは「関連商品で利便性を提供する提案」と覚えると分かりやすいでしょう。どちらも顧客満足度を高めつつ、売上向上を図る効果的な手法ですが、提案内容やタイミングに応じた使い分けが成功の鍵となります。
「定期引上げ」はEC・通販業界特有の用語です。「引上げ」という言葉は、ビジネスやマーケティングの文脈で顧客の購買頻度や購入額を高めることを意味します。したがって、「定期引上げ」は、顧客を定期購入サービスに「引き上げる」ことを目的としています。たとえば、化粧品を毎回単品購入している顧客に、一定のサイクルでの定期的な自動購入・発送を提案することが該当します。
定期引上げは、顧客の満足度を維持しつつ、売上の安定化・LTVの向上を目指せる方法として有効です。また、顧客にとっては自身のニーズに合わせたプランが提供されることで利便性が高まり、ロイヤリティが向上する効果も期待できます。成功の鍵は、顧客の利用状況に合った提案を行い、適切なタイミングで引上げを促すことにあります。
アップセル成功のポイントは、単に高価な商品を勧めるのではなく、顧客のニーズを正確に把握し、上位商品を選ぶことで得られる具体的なメリットを分かりやすく説明することです。ただし、押し付けがましい提案は逆効果となるため、お客様の反応を見ながら、自然な会話の中で提案することが重要です。
顧客が求めているものや期待する効果を把握することで、アップセルの成功率が上がります。購入目的や予算、好みに関する情報を聞き出し、それに基づいた上位商品を提案することが重要です。例えば、「髪のダメージが気になる方には、補修効果の高いシャンプーをおすすめします」と具体的に説明することで、顧客に響きやすくなります。
高価格な商品にどのような利点があるか、わかりやすく説明することで納得感が生まれます。「この商品は通常のタイプよりも保湿効果が高く、長時間しっとり感が続きます」など、商品の特徴やメリットを具体的に伝えると、顧客にとっての価値が明確になります。長い説明は逆効果になることが多いため、アップセルのメリットが一目でわかるように、簡潔な表現を心がけましょう。
顧客が興味を持ち始めたタイミングや購入に前向きな場面で、さりげなくアップセルを提案するのが効果的です。たとえば、購入の最終確認時や質問が出た時に「さらに満足いただける商品がある」と提示することで、自然な流れで受け入れられやすくなります。このタイミングでは、顧客は購入を前向きに検討しているため、少し高い商品でも価値を感じやすくなります。
クロスセルを成功させるには、提案する商品やサービスが顧客にとって本当に価値があり、有用な商品であると感じてもらえることが重要です。単に関連商品を勧めるだけでなく、「この商品と一緒によく購入される商品です」といった具体的な事例を示すことで提案の説得力が増し、利点や使用方法を説明することで、顧客に「一緒に購入したほうが有益だ」と感じてもらえるようにすることがポイントです。
購入を検討している商品と相性が良く、顧客のニーズに合った商品を提案することで、自然に購買意欲を引き出せます。例えば、パソコン購入を検討している顧客には、キーボードやマウスといった特定の商品に必要なアクセサリーや追加機能など、自然に補完できるものが効果的です。他には「このシャンプーには、同じシリーズのトリートメントを使うことで効果が最大限発揮されます」というように、メイン商品との相乗効果や使用価値を具体的に説明するとより効果的です。数値やデータ、他のお客様の実例を交えることができれば説得力が増します。
「パーソナライズ」とは、一人ひとりに合わせて、サービスや商品、情報などを調整することを意味します。コールセンターにおいては、過去の購入履歴や顧客の関心をもとに適切な提案をすることがクロスセルの成功率を高めます。類似の属性を持つ他のお客様の購入パターンを参考にすることで、個々の顧客に相性のいい関連商品を提案できます。また、季節性や使用シーンも考慮に入れることで、より購買意欲が引き出されます。
複数の商品を同時購入する際の割引や特典(セット割引、送料無料など)を提示すると、顧客の購買意欲が高まります。セット購入での割引やお得感を明示することで、「今買ったほうがいい」と思ってもらいやすくなります。ただし、価格メリットを前面に出しすぎると商品の価値が下がって見えるため、あくまでも付加的な要素として提案します。
定期購入は企業にとって安定的な収益源となるため、定期引上げは顧客単価(LTV)を向上させるうえで重要な施策です。ただし、急激な変更は解約リスクを高める可能性があるため、お客様の使用状況や満足度を十分に把握した上で、適切なタイミングで段階的に提案することが重要です。
定期購入は、LTVの向上や収益の安定化といった恩恵をもたらします。消費者側にとっても長期的なコストの節約や手間の軽減などのメリットを提供することができます。「長期的なコスト削減」や「定期的に商品が届く便利さ」といった利点を具体的に示すことで、定期引上げがより受け入れられやすくなります。特に「お得感」や「手間の軽減」については、具体的な数字や事例を用いると効果的です。
また、定期購入に限った話ではありませんが通販事業者として知っておくべき法律を抑えておくことで消費者の信頼を勝ち得ることができます。以下のような法律はその概要についてだけでも知識を身に付けておくと役に立つでしょう。
顧客の過去の利用状況や消費頻度に基づき、個々のニーズに合った提案を行うことが鍵です。たとえば、1か月で消費を想定している商品について、消費の早い顧客には2週間ごとの配送を提案するなど、細やかな対応が効果的です。
顧客データは、顧客とのコミュニケーションやサービス提供の改善に役立つ貴重な情報です。顧客が何を求めているのか、どのような課題や悩みに直面しているのかを把握し、それに応じた対応を行うことが重要です。
顧客データの活用には、CRM(Customer Relationship Management)システムやデータ分析ツールの導入が有効です。これにより、顧客の購買履歴や問い合わせ履歴、傾向などを把握し、個別の顧客に適したサービスやアプローチを提供することができます。
購入後にフォローアップの連絡を行い、満足度を確認しつつ、引上げを提案します。顧客が既に満足している場合、次の段階として定期購入プランの検討を促しやすくなります。
アップセル、クロスセル、定期引上げを成功させるためには、コールセンタースタッフの対応スキルが重要です。顧客のニーズを正確に捉え、信頼関係を築くことができれば、提案に対する受け入れ率が向上します。
親身に対応し、顧客の質問や不安にしっかりと応えることが大切です。顧客との信頼関係が構築されていれば、アップセルやクロスセルの提案に対する心理的抵抗が減ります。積極的に相手のニーズを聞き取り、親身に対応しましょう。
顧客は自分のニーズをすべて適切に言語化して説明できるわけではありません。したがって、類似する顧客データを事前に収集しておいたり、粘り強くコミュニケーションを積み重ねることで、事前に顧客がどのようなニーズを持っているのかを類推し、代弁できるように準備をしておきましょう。「この人は本当に自分のための提案をしてくれている」「この人は商品やサービスに対する豊富な知識を持っている」と消費者に感じてもらうことで、価値を実感していただくことができます。
顧客に負担を感じさせずに価値を伝えるためには、提案内容をシンプルにすることが効果的です。特にアップセルやクロスセルでは、複雑な説明を避け、メリットが一言で伝わる表現が求められます。
一方で、アップセルやクロスセル、定期引き上げなどの提案に対する不安や嫌悪感を持つ消費者も一定数存在します。ネガティブな印象を払拭し、のちのトラブルを防ぐためにも契約プランの変更や一時停止・再開などに関する説明は省略することなくできる限り丁寧に行うべきです。
提案を断られても、丁寧な応対を継続します。「また機会がございましたら」と余地を残しつつ、次回の提案に活かせる情報(なぜ購入を見送ったのかなど)を自然な会話の中で収集します。顧客の発言はさえぎることなく傾聴に徹し、相槌や相手の言葉を要約して繰り返してあげるなど、顧客の発言を促すためのテクニックを利用することで、顧客の特性をヒアリングできるだけではなく、関係性の醸成にも効果を期待できます。
通販コールセンターでの「アップセル」「クロスセル」「定期引上げ」を効果的に行うことで、売上向上と顧客満足度の両立が可能です。各テクニックは個々の顧客のニーズや状況に応じて調整することで、最大の効果が得られます。これらの手法を活用し、継続的に改善していくことで、確実な成果を上げましょう。
ディー・キュービック株式会社は、1979年に設立されたコンタクトセンター運営・DX化の専門企業です。多様化するコミュニケーション環境の中で、アナログとデジタルでの「対話」から豊かな「顧客体験」を共創する企業として、クライアントの付加価値創造を支援しています。
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