2024.12.23 NEW
生成AIはビジネスにおいて、なくてはならない存在になりつつあります。コンタクトセンターでもそれは同じです。今回、私たちのヘルプデスク業務で利用している「SolutionDesk」の開発元であるアクセラテクノロジ株式会社萩原様に、ナレッジマネジメントとAIの効果的な活用方法を伺いました。
目次
アクセラテクノロジ株式会社 取締役COO
専門はコンピューターサイエンスでアクセラテクノロジ株式会社の創業メンバー。趣味は全国の動物園めぐり。レッサーパンダをこよなく愛し、カメラ機材を持って1日レッサー小屋の前にはりつくのが幸せ。
-まずはSolutionDeskについて簡単に教えていただけますか。
SolutionDeskは、企業が持つ専門知識や情報を一元管理して、AIを通して効率的に活用できるようにするナレッジマネジメントプラットフォームです。
大きく3つの機能があり、1つ目はナレッジの活用支援、マニュアルやFAQをキーワード検索やタグで絞り込むことができます。2つ目はナレッジのAI活用、AIからアドバイスをもらったり、回答メール、FAQを作らせるということができます。3つ目は問い合わせ管理、お客様とのやり取りをチケットで管理し、チャット形式で見える化できます。
-2つ目のナレッジとAIについて、このキーワードを推していらっしゃいますよね。ナレッジ×AIについて解説をお願いします。
会社の中にはさまざまなナレッジがあります。ナレッジの中には、業務手順がまとまったマニュアルやFAQといった文字で表現されているものと、現場の担当者しかわからない経験や勘、作業のコツといったものがあります。ナレッジマネジメントでは、前者を形式知、後者を暗黙知と呼びます。我々はこの形式知と暗黙知の両方をナレッジとして捉えています。例えば、形式知であるマニュアルも500ページあるような分厚いマニュアルでは読み切るのが大変です。ですが、AIを使えばマニュアルを全部読み込まなくても簡単に要約させることができ、非常に使いやすくなります。さらには暗黙知であるノウハウもAIを使うことで容易に文章化できます。そういった観点からナレッジマネジメントとAIは非常に親和性が高いと思っています。これを踏まえて、我々はナレッジマネジメントを軸にAIを活用するというコンセプトを「ナレッジ×AI」と名付け、活動しています。
-誰しもが自身の持つ経験やコツを人に伝えることは難しいと思った経験があると思います。暗黙知を形式知に変換する方法はどのようなものがあるのでしょうか。
我々は創業以来20年以上、ナレッジマネジメントを企業に定着させる活動をしていますが、「暗黙知を形式知にするという理念としてはわかる。だが、実際どうやるんだ?」というご意見をいただきます。ベテランの方は自分のノウハウが有用だと気付いておらず、手順書や資料を作成してもらえないことが多いのは事実です。生成AIが出てくる以前は、経験の深い方にインタビューをして文字起こしをしたり、作業の様子を動画に残しておくといったことが主流でした。しかし、生成AIが出てきたことによって、熟練者の方が日々使っているメモ書きや、部下に対して指示を出すメールなどに詰まったエッセンスをAIにインプットすることで、形式知を作り出すことができるようになりました。 サポートの分野で言えば、経験豊富な方の応対履歴には伝わりやすい表現や、クレームにならない言い回しなどの知識が散りばめられています。今までは応対履歴を読み込んで、ナレッジ化やマニュアル化していましたが、AIを使うことによって簡単に形式知化できるようになりました。
-ナレッジマネジメントという言葉は、皆さん一度は聞いたことあると思うのですが、ナレッジマネジメントというものにフォーカスした製品や、ナレッジマネジメント自体を進めてきた背景について教えていただけますか。
VUCA(※)という言葉もあるように、企業を取り巻く環境はすごい勢いで変化しています。例えば、グローバル化が進んでいるのでそれに合わせる必要がある、人材の流動が激しくなってきた、など様々な環境が変わってきていると思います。そんななかでも、企業は成長していく必要があり、そのためには独自の知識やノウハウを活用していかないと生き残れない。まさにナレッジマネジメントは企業の持つ独特のナレッジを活用することによって成長していくための起爆剤になると考えており、企業にナレッジマネジメントを定着させる活動を行っています。
※VUCA: Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)という4つの単語の頭文字をとった造語。社会・ビジネス環境が高度に複雑化する中で、想定外のことが発生したり、将来の予測が困難であったりする不確実な状態を示す。
-ナレッジマネジメントはどのような業種・業態の企業でも取り入れることができますか。
どのような企業であっても適用できると思います。ノウハウやコツというものを継承することによって、企業活動を積み上げていくことができ、組織内・組織間で共有できます。ビジネスにおいてはたくさんの失敗と改善を繰り返しながらベストプラクティスを探しますが、ナレッジマネジメントがなければ、またゼロの状態に戻ってしまいます。次の人たちがやるときにゼロスタートだと、その企業として積み上げていくものがなくなってしまうので常にスタートアップ企業みたいになります。企業活動で得た知識が形式知でとして蓄積されて、次の世代も改善とノウハウを積み上げていくことによって、よくなっていくと思います。例外があるとすれば個人事業主や、2、3人だけで続けていく会社であれば、いらないかなと思うこともあるでしょう。ただ、ある程度の人間が集まって、それが1回限りの集まりではなく、継続的に事業を続けていくのであれば必ず必要になってくるアプローチかと思います。
-ナレッジマネジメントとは認識していないだけで、実はどの企業でも当たり前にやってきているということですね。これを仕組化してサイクルを回していくために、ナレッジマネジメントと名付けることが有効ということでしょうか。
そういう側面もあります。昔からマニュアルを書く、手順を残す、先輩の後ろ姿見て学ぶといったことをしていると思うのですが、それをナレッジだと定義することによって活動がしやすくなります。自分が持っている経験もナレッジに該当するんだという気付きにもつながります。そうなることで特に経営層の方々は、ナレッジを残しなさいと言いやすくなりますし、ナレッジマネジメントの必要性が顕在化しますので、名付けることはとても重要です。
-AIとナレッジを組み合わせて使うことで、今までよりもより効率的かつ精度が高く新しいナレッジを生み出せるということですが、どのように活用すれば良いのでしょうか。
分かりやすいのは、問い合わせへの回答をAIに作らせる、AIに探させるということでしょうか。例えば、マニュアルを参照して、回答のメールを作成する。文章作成に苦手意識がある方は、一生懸命作文していたら2時間くらいかかってしまうなんていうこともあると思います。AIは文書生成が得意なので、ちょっとしたテンプレートを用意しておけば、的確な回答文を短時間で返してくれるので、人はレビューして送信するだけです。
他にはクレーム対応でも使えます。研修で教わるとか頑張るという根性論ではなく、クレーム対応のガイドラインを要約して、どのように対応するのかというアドバイスをAIにさせることで、オペレーターの心理的負担も軽減できます。あとは、多言語対応です。今までは、お客様から英語などの外国語で問い合わせが来た際に英語のわかる人が担当になり、日本語のナレッジから回答を探し出し、英語で回答文を書く、もしくは日本語で書いたものを英文にして回答するプロセスでした。AIは翻訳も得意ですから、英語の問い合わせをそのままAIに読ませて、日本語で回答を作らせます。日本語でレビューして問題なければ、それを英語に翻訳させることで、外国語がわからなくても回答ができるようになります。
ここまではナレッジ活用の話ですが、ナレッジを生み出す方でも活用できます。一番大きいのはFAQを作るところです。今、AIを使ってFAQを作るというのをクライアントへご提案差し上げているのですが、我々は特徴的な使い方をしています。応対履歴といわゆる形式知として貯まっているマニュアル、既存のFAQを組み合わせることによって、新たなFAQを作るということを推奨しています。応対履歴からよくある質問を抽出して、その後にマニュアルやFAQから正しい回答を作成するという方法です。
応対履歴から回答まですべて作るケースも散見されますが、応対履歴を基にしているので100点満点の回答ができないこともあります。また、別のアプローチとして最近見かけるのがマニュアルからFAQを作るケースです。確かに回答の部分はすごく精度が高いですが、肝心の質問の部分もマニュアルから作っているので、必ずしもよくある質問になっているわけではありません。確かに全自動でFAQが作れるので楽ですが、お客様が求めている質問に対する回答集になっているかというと疑問に思います。
-コンタクトセンターにおけるナレッジというのはどういうものですか。
やはり取扱説明書、手順書、FAQは本当に大きなナレッジかと思います。他にもメールやチャットでお客様と応対するようなサポートでしたら、返信メールの雛形みたいなもの。先ほど少し触れましたクレーム対応の手順みたいなもの。こういったものもナレッジと捉えていいと思っています。あと、暗黙知と形式知の間くらいの位置付けにはなると思いますが、広くとらえれば応対履歴をナレッジとして扱うというのは重要です。
-コンタクトセンターでAIの力を効率的に活用するためのコツとかポイントはありますか。
AIを使うためにはプロンプトという指示文を作らないといけません。これは実はけっこう大変で、懇切丁寧に解説してAIに問い合わせをかけると、適切な結果が返ってきます。いっぽう、プロンプトに曖昧なことを入力してしまうと、モヤっとした曖昧な回答しか返ってきません。ですので、プロンプトを構成する能力がAIを活用するうえでの精度を左右します。しかし、このスキルを利用者やオペレーターの方、全員が持つということは不可能だと思います。プロンプトそのものがナレッジという風に捉えて、そのプロンプトを再利用し、現場の誰もがAIから情報を引き出せるようにするというのが、すごく重要だと思っています。
-では、最後にナレッジマネジメントの取り組みを始めようと考えている人に向けて、導入に失敗しないためのアドバイスをいただけますか。
一言でいうと、業務に組み込むことがすごく重要です。ナレッジマネジメントというのはシステムではありませんので、手順書やナレッジの内容も変えなければいけないことがあります。でも、それを見直しただけでは、その後が続きません。業務フローの中で、ここにナレッジを使うとか、ここでナレッジを改版する、場合によっては今のフローそのものに変更を加える必要が出てきます。そのうえで、ここにシステムを使いましょうという風にマッピングしていくことで可視化され、業務の中にナレッジを取り込み活用できるようになるではないでしょうか。
-本日は、ナレッジマネジメント、さらにAIについてたくさんお話いただきましてありがとうございました。
どうもありがとうございました。
最後までお読みいただきましてありがとうございました。何か少しでもヒントや役に立てたなら幸いです。私たちはナレッジマネジメント運用、ナレッジマネジメント開始前の業務可視化などを行っております。ナレッジマネジメントに少しでも興味や疑問がございましたら、お気軽にお問合せください。
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